【英総選挙】「英国から離脱」地域感情噴出 スコットランドで独立派の民族党が大躍進 8割超の48議席を独占

【ロンドン時事】12日投票の英総選挙で、スコットランドの独立を掲げる地域政党スコットランド民族党(SNP)が大きく躍進した。英領北アイルランドでは、アイルランドとの統一を求める「ナショナリスト」政党が勢力を拡大。今回の選挙結果は、英国の欧州連合(EU)離脱をきっかけに各地で噴き出した「連合王国(英国)からの離脱」を望む地域ナショナリズム感情を鮮明に映し出した。

◇2度目の住民投票宣言
 
「今こそスコットランドの人々が自らの未来を決める時だ」。SNPのスタージョン党首は13日の演説で、独立の是非を問う2度目の住民投票に向けた手続きを始めると宣言した。SNPはスコットランドの選挙区59議席のうち、8割超の48議席を独占した。
 
2014年に行われた住民投票では、独立反対が多数を占めた。しかし、16年の英国民投票でEU離脱が決まると、EU残留派が多かったスコットランドで不満が強まった。
 
ジョンソン首相率いる保守党はEU離脱派の多いイングランド北部・中部で労働党の大票田を切り崩し、大勝を収めた。一方、スコットランドではSNPが独立を旗印に保守、労働、自由民主各党から議席の多くを奪った。

特に衝撃を与えたのは、SNPの無名候補が自民党のスウィンソン党首を落選に追い込んだことだ。スウィンソン氏は「ナショナリズムの波が境界線の両側(イングランドスコットランド)を一掃した」と唇をかんだ。
 
◇南北統一派、牙城を攻略
 
北アイルランドでは、シン・フェイン党などのナショナリスト政党が英国帰属維持を主張するユニオニストの牙城ベルファストで2議席を奪取するなど伸長。1921年にアイルランドが南北に分断されて以降、英議会の北アイルランド選出議席ユニオニストを初めて上回った。
 
EU離脱は、北アイルランドの国境管理をどうするかが大きな争点となった。しかし、ジョンソン首相がまとめた離脱案は、北アイルランドを実質的に英本土から切り離し、EUの関税圏に残す内容。保守党に閣外協力してきたユニオニスト民主統一党DUP)はこれに猛反発したが、事実上切り捨てられ、議席も減らした。
 
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のサイモン・ヒックス教授はスコットランド独立問題をめぐり、「われわれは(スペインからの独立運動が活発な)カタルーニャ自治州と同じ状況にある」と指摘。さらに「生きているうちに南北アイルランド統一も目の当たりにするかもしれない」と話している。
 
イングランドウェールズスコットランド北アイルランド。四つの「国」で構成される連合王国は岐路に差し掛かりつつある。

2019年12月16日07時03分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019121500205
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