【研究】人間の本来の寿命は38歳 DNA解析による脊椎動物の寿命推定

DNAを解析することで動物の寿命を推定する方法によれば、人間が天から授かった生きられる期間は本来38年程度であるらしい。
オーストラリア連邦科学産業研究機構の分子生物者ベンジャミン・メイン氏らが『Scientific Reports』(12月12日付)に掲載した研究では、動物が年齢を重ねるにつれてDNAがどのように変化するのかに着目し、そこから寿命を推定する方法が考案された。

■ 種によって大きく異なる脊椎動物の寿命

動物は歳をとるほどに生物学的機能が衰えてゆくが、そのために生きていられる長さが制限されてしまう。
これは生医学的にも生態学的にもとても重要なことなのだが、動物がいったいどれくらいの期間を生きられるのか把握するのは簡単なことではない。

DNAは生命の設計図である。
ならばここを調べれば、老化や寿命といった情報を得られると思われた。
それなのに、これまで寿命の違いを説明するDNA配列はなかなか発見されてこなかった。

しかもなぜだか脊椎動物の寿命は大きく異なる。
8週間しか生きられないピグミーゴビーという小魚がいるかと思えば、400年以上生きることがあるニシオンデンザメなんてものもいる。

■ 寿命を把握する意義

こうした野生動物の本来持つ寿命を把握することは、彼らをきちんと管理・保全するうえで必要不可欠なことだという。
たとえば絶滅危惧種なら、寿命から種を存続させるために必要な個体数を推測することができる。

漁業のような産業なら、漁獲量の制限を定めるうえで大切な情報となる。
ところが、ほとんどの動物の寿命は不明なままだ。

一応推定されていたとしても、そのほとんどは飼育された少数の個体に基づくものでしかない。
研究者よりも長生きしてしまう動物なら、寿命を把握することはよりいっそうむずかしくなる。

■ DNAのタイマー「DNAメチル化」

ここ数年、「DNAメチル化」というDNAの特殊な変化を利用することで、動物の年齢を推定する”DNAタイマー”が開発されてきた。
DNAメチル化は、遺伝子の配列はそのままに、その活性・不活性を制御するものだ。

そして、これまでの研究から、特定の遺伝子のDNAメチル化が、霊長類といった一部の哺乳類の寿命の上限に関連するらしいことが明らかになっていた。
ここから動物の寿命を推定する方法を考案したのが、メイン氏らの研究グループだ。

彼らは、公開されている脊椎動物252種のゲノム(遺伝情報全体のこと)を、これまでに知られている動物の寿命と比較してみた。
そして、この比較データから、42個の特定の遺伝子で生じているDNAメチル化を調べることで、脊椎動物の寿命を推定できるだろうことがわかったのだ。

■ カメは120年、クジラは268年、ヒトは?

この方法を使えば、人間よりずっと長生きする動物やとうの昔に絶滅してしまった種の寿命を推定することができる。
それによると、世界でもっとも長寿だとされる哺乳類、ホッキョククジラの寿命は268年であるという。
この推定値は、これまでに知られている最高齢の個体より57年も長い。

また絶滅したケナガマンモスの寿命は60年で、65年と推定された現生のアフリカゾウと似たような長さだ。
2012年に絶滅したピンタゾウガメは120年。ちなみにこの種の最後の個体となったロンサム・ジョージは112歳で死んだので、やや早死にだったのかもしれない。

我々の親戚とされるネアンデルタール人とデニソワ人の寿命は37.8年だ。
そしてDNAの解析結果によれば、我々人間の”自然”な寿命は38年であるという。

だが、医学の進歩とライフスタイルの向上のおかげで、我々は今回唯一の例外として、それより倍以上も生きることができるのだそうだ。
他の動物でも、ゲノムさえわかれば同様に寿命を推定することができる。
生態学的にも保全の観点からも非常に重要な発見で、より適切な野生動物の管理が可能になるだろうとのことだ。

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