【東京】「こどもの城」あらため「都民の城」  えっ 利用最短6年なのに改修費117億円!? それだけあれば…

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2015年に閉館した旧こどもの城(渋谷区)が23年度、「都民の城」(仮称)として再オープンする。再整備を望む声も多く念願の復活と思いきや、都の計画案によると再開期間は最短6年。そのための改修費に、117億円近くかかる可能性もあるという。6年のために117億円!? 都民もびっくりの「お値段」について調べてみた。


 改修費百十七億円は、もとの所有者である国が一一年に試算した金額で、実際にかかる費用は未定。ただ都の担当者は「一つの目安になる」としているので、信ぴょう性が高い数字といえる。

◆117億円あれば何ができる?

 どれほどの大金なのか。すぐにはピンとこず、何ができるのか探してみた。プロ野球・広島カープ本拠地マツダスタジアムの本体建設費=九十億円。年二百五十万人超が訪れる金沢市金沢21世紀美術館建設費=百十三億円。二〇〇六年に財政破綻した北海道夕張市の年間一般会計予算=約百九億円。



地域のシンボルだったり、観光名所だったり、はたまた住民の生活や命を守る予算だったり。どれも街の貴重な資産だ。それに匹敵する金額を投じ整備する「都民の城」とは-。


 都の計画案では、設備の老朽化で閉館した旧こどもの城をリノベーション。人気だった子どもの遊び場を再整備しつつ、生涯学習や創業支援などの機能を新たに加える。館長には教育評論家の尾木直樹氏が就任する。旧こどもの城の象徴の一つでジャニーズのアイドルたちも多く出演した青山劇場と小劇場ブームをけん引した青山円形劇場は劇場としての機能を一部廃止する。

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 施設としての活用期間は「当面の間」。早ければ二九年から周辺の都有地との一体活用を進めるとしており、施設は閉館、取り壊される可能性が高い。


 「こどもの城、青山劇場、青山円形劇場の存続を願う有志の会」の有泉慶美共同代表は、計画案について「子ども向けの内容が減る一方、企業の支援や展示スペースが増えている。劇場の機能廃止もこどもの城の良さを消してしまっている」と批判。「これだけの金をかけているのに内容も中途半端。それも最短六年で閉館なんて」と首をかしげた。


 都の担当者は「エレベーターや電気設備などを一新するため、費用がかかる。六年はあくまで最短の場合で、都民の城を多くの人が交流できる施設として有効に活用したい」と話している。

◆期限付きなぜ? 周辺の都有地と一体開発か


 都が「6年」にこだわるのはなぜか。鍵を握るのが旧こどもの城の裏にある旧青山病院跡地の存在だ。


 表参道駅近くの一等地でありながら08年の病院閉鎖以来、再整備が進んでいない。一方通行の区道からしか出入りできないのが大きな理由で、再開発のためには青山通りに接する旧こどもの城跡地などとの一体活用が不可欠。舛添要一前知事時代には、旧こどもの城跡地と合わせて、広尾病院の移転先にする計画があったが、小池百合子知事が白紙撤回し、現在は民間に貸し付けて住宅展示場となっている。


 29年には、周辺の都有地がすべて契約更新時期を迎える予定で、一体開発には絶好のタイミング。都としては、都民の城の開館を期限付きとすることで、確実に再開発を行いたい狙いがあるとみられる。


マツダスタジアムの建設費 90億円
金沢21世紀美術館の建設費 113億円
夕張市の年間予算 約109億円
エンジェルス大谷翔平選手の年俸 約7200万×162年分(共同)

2019年12月16日 紙面から 東京新聞
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